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傍にいた赭あから顔の老人が低い声で云つた。
道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、
「何にしても、えらいこつてしたなあ」
見たことのない顔だつた。患者なら玄関から来る筈だ。
房一は急いで膿盆をひきよせた。
「いや、いや」
紛まがふことなく、それは神原喜作だつた。
「ねえ、御苦労なこつた」
「水神淵を知つとんなさるだらう」
「射撃たつて、あれはクレーとかいふものを射つんでせう。わたしはね、他に何か的まとでもあるのかと思つたら、何のことはない、小さなカワラケの皿をね、かうひよつと機械仕掛けでとばしてね、――そいつを射つんでせう。なるほどうまい仕掛けにはちがひないが、見ているとあつけないもんですな。それに音だつてね、景気よくないんですよ。ボスツといふやうな音でね」
「何だらう、山師を煽おだてて又一儲けしようてんだらう」
「買収ですかな」
「あいつももう仕かたがないのですよ。『青ペン』通いばかりしているのですから。」